五代友厚が1860年代に数回に渡って訪れた上海に行ってきました。当時、船が最初に到着したのは東シナ海から長江に入り黄浦江と交わる場所、呉淞でした。ここから黄浦江を遡上して上海の中心部に入っていったのです。
I went to Shanghai where Godai Tomoatsu visited several times in the 1860s. At that time, ships for Shanghai first arrived at Wusongkou, the point that the East China Sea, Chang Jiang River (Yangtze River) and Huangpu River meet.
地下鉄で長江を目指します。3号線の宝楊路駅に行くため切符を買い求めます。上海の中心部から宝楊路駅まで片道5元でした。1時間近くかかる距離ですが、日本円で80円ほどです。

乗降ドアは、降りる人が真ん中から、乗る人は両脇から同時に乗り降りします。人が多いので、同時に乗降しなければ時間がかかり過ぎてしまうのでしょう。

車両は新しく清潔です。ほとんどの人がスマートフォンをさわっています。


淞浜路駅付近の蘊藻浜と黄浦江が交わるところです。黄浦江沿いは造船や物流をはじめとするさまざまな工場が立ち並んでいます。

宝楊路駅に到着しました。黄色は3号線のラインカラーです。

駅構内は中華風デコレーションでウエルカムな雰囲気です。スーツケースを引いた人であふれています。宝楊路は国際クルーズターミナルの最寄駅で、船に乗降する人が利用するためです。

長江を船で渡りたいと思い、渡船の出ている宝楊路碼頭へ向かいました。宝楊路駅から宝山29路のバスに乗ります。バス停は駅から歩いて1分ほど、線路より西側の宝楊路沿いにあります。

宝楊路碼頭に着きました。バスを降りると大きな售票処、つまり切符売り場が見えるのでわかりやすいです。

乗ってきた宝山29路のバスです。宝楊路駅から宝楊路碼頭まで10分程度でした。

長江を渡って崇明島へ行くことにします。渡るのは川ですが、高速船で約1時間かかります。1時間も乗るのに乗船運賃は16元、日本円で280円ほど。切符売り場は行き先によって窓口が決まっているので、枚数さえ伝えれば一番早い便の切符を売ってくれます。宝楊路から崇明島の南門へ行く船は、1時間に1本の割で出ていました。

宝楊路碼頭の待合室です。掲示板があるので安心です。

コンビニもあります。飲み物やお菓子、ちまきやゆで卵などの軽食、お土産物などが売られていました。

いよいよ乗船。自由席ですが、定員は決まっているので列はそれほど乱れません。

「瀛洲10」という船が待っていました。

宝楊路碼頭からみた長江。日本の感覚だと川とは思えません。海を渡る気分です。

高速船はかなりのスピードで進みます。甲板には出られませんし窓も開きませんが、途中いろいろなものが目に飛び込んできます。工場の煙突やクレーンが日本の10倍くらいの規模で並んでいます。
窓を通しているので、写真の画面が青っぽくなってしまいました。

長江には何十艘どころか何百艘もの船が行き来しています。わかりにくいですが、向こうに多数のバルク船などが見えます。

1時間かかって崇明島の南門港に近づいてきました。日本なら瀬戸内海を渡るぐらいの感覚でしょうか。中国の大きさを実感するにはぴったりの船旅です。

崇明島に着きました。

しばし長江を眺めます。海との違いは、青くなく水が茶色いことでしょうか。日本の川は流れが早く短いので水が澄んでいますが、長江は大量の泥とともに流れているので一面茶色です。砂州である崇明島は、今も年々流れついた泥が堆積して面積が広がっているそうです。

船から降りて港を出ます。

南門港のすぐ北側にある南門公園で銀杏拾いをする人たち。港の東側には瀛洲公園という大きな公園もあります。「瀛洲」は乗ってきた船の名前と同じです。瀛洲というのは仙人たちが住む中国の伝説上の神山のひとつだそうです。

崇明島には人力三輪車が多数走っています。

南門港から八一路という大きな通りをしばらく北へ行くと、歩行者天国になり、両側に店が連なっています。

小さなショッピン・モールのようなところもありました。長江を渡るのが目的で、崇明島のことはあまり調べていなかったので、港近くを歩いてぐるっと一周してみました。

柔軟性のある犬。

崇明島を自転車で回るためのお勧めルートを書いた案内板がありました。島といってもかなり大きいので、一周しようと思ったら泊りがけになるでしょう。崇明島は自然が豊かで多くの種類の生き物が生息し、湿地帯や渡り鳥などでも有名だそうです。最近はエコ・アイランドとして売り出し中のようです。

たくさんの電気自動車が充電中。

高速船の船着場の西側にカーフェリー乗り場があります。

南門港に戻ってきました。

港近くの売店です。崇明島名物である崇明餅というもち米でつくったお菓子が売られていました。

南門港の切符売り場。予定していた船は船体の不具合でキャンセルになったということで、1時間あとに出発する船に乗ることになりました。

南門港の待合室。宝楊路碼頭よりも大きいです。

宝楊路碼頭へ戻る船は「瀛洲3」でした。

帰りも、大型クレーンが何十機も並ぶ工場群に圧倒されます。

船内はこんな感じです。帰りは2階席に座りました。

今回は同じルートを船で往復しましたが、別の埠頭からも船が出ていますし、上海市内と崇明島をバスで移動することも可能です。将来は地下鉄が通るという話もあります。
宝楊路碼頭を降りて、すぐ近くの呉淞口国際クルーズターミナルへ向かいました。途中のフェンスに呉淞口国際クルーズターミナルの全体図が描かれていました。このターミナルは、2011年にできたばかりのまだ真新しい建物です。五代友厚らが日本から到着した時代は、どのような港だったのでしょうか。

桟橋の入り口までは歩いて10分ほどです。入り口に警備員がいますが、特にチェックなどはありませんでした。桟橋は歩いて渡るにはかなりの距離で、風も強いです。天気のよい暖かい日であれば気持ちがいいかもしれません。両側にいろいろな建物が建っていますが、人の気配はあまりありませんでした。

黄色い難破船のような船が浮かんでいます。何かのオフィスとして使われているようです。

大型クルーズ船が2隻碇泊していました。中央がクルーズターミナルの建物です。

船といっても巨大なマンションのようです。このターミナルからは日本の九州へ往復するクルーズ船がひんぱんに出ています。

ターミナル・ビルに到着しました。船客は街に出払ってしまったようで、建物内に人はほとんどいませんでした。スターバックスがありましたが閉まっていました。そのほか飲食できるところはありません。海、いや河を眺めてゆっくりできると思ったのですが、展望台なども見当たらず少々がっかりです。

外洋から中国に最初に到着した場所の雰囲気だけ感じて、桟橋を再び歩いて戻ります。警備員の横を通り過ぎると案内板がありました。このあたりは日本軍が上陸して激戦地となるなど軍事的な要衝でもありました。

獅子橋を渡り、西へまっすぐ宝楊路を進むと宝楊路駅に出ます。橋の向こうに見える茶色い建物は基督教呉淞堂という教会で、そのちょうど向かい側にバス停があります。上海のバスは、同じルートでも往路と復路でバス停が異なるようで、この場所のバス停は宝楊路駅に向かう方向にしかありません。

しかし、せっかくなのでバスに乗らず宝山の町を歩いてみることにしました。途中、宝山烈士陵園や上海開放紀念館がありました。



地下鉄宝楊路駅に到着。歩くと40〜50分かかります。中国は広い。日本のような感覚で歩いているとあっという間に日が暮れます。

上海の中心部に戻ってくると、駅構内で警察犬が働いていました。

<住所>
宝楊路駅:上海市宝山区同済路宝楊路
宝楊路碼頭:上海市宝山区宝楊支路
南門港:上海市崇明県南門支路
瀛洲公園:上海市崇明県鳌山路679号
呉淞口国際郵輪港(呉淞口国際クルーズターミナル):上海市宝山区宝楊路
基督教呉淞堂:上海市宝山区宝楊路74号
宝山烈士陵園:上海市宝山区宝楊路599号