五代友厚 上海浦東(2)
Godai Tomoatsu, Shanghai Pudong (2)

浦東陸家嘴
19世紀後半の浦東陸家嘴 Lujiazui in Pudong, the late 19th Century(Virtual Shanghai)

文久2年(1862年)の上海滞在中、高杉晋作はたびたび五代友厚のもとを訪れ、国事を談じ、蒸気船購入の話などを聞いていたようだ。5月17日(6月14日)には、五代、高杉、中牟田倉之助らで英人リチャードソン所有の蒸気船を視察に行っている。他にも幕吏を含め蒸気船や修船場の見学に行く者が何人もいた。五代は対岸の浦東で長毛賊の争乱を見ているが、当時浦東には造船所や修船場が造られていたので、船の見分のため浦東を訪れていたとも考えられる。

千歳丸に先んじて、五代は同年1月にも英商トーマス・グラバー(Thomas Glover)と上海へ渡り、長さ25間余り、代価凡そ4万余両の蒸気船を購入したと伝えられる。さらにその1年ほど前、薩摩藩は英船イングランド号(The England)を12万8,000ドルで購入したことが、長崎のグラバーから上海のジャーディン・マセソン商会(Jardine, Matheson & Co.)宛て1861年1月付けの書簡で報告されているという。高杉は五代から蒸気船の話を聞いて「余程有益に相成様子なり、蒸汽船買入之直段十二萬三千トル、日本金に直し七萬両」と書いているが、イングランド号のことかもしれない。

また、文久3年春に鹿児島に廻航されたサー・ジョージ・グレイ号(The Sir George Grey)も薩摩藩が上海で買い付けたもので、5万2,000両だったという。五代龍作の『五代友厚伝』では、五代がジャウジキリー号という船を上海で購入したとする。イングランド号とサー・ジョージ・グレイ号は、それぞれ天佑丸、青鷹丸と名付けられた。双方とも薩英戦争で五代や松木弘安が乗船していた船で、五代が買い付けに関わった可能性は高い。

During the late Edo period, Godai Tomoatsu visited Shanghai by order of Satsuma Domain.  He purchased several steamships for the Domain who attempted to foster the industries and strengthen the military power of Japan.

<参考文献>
小島晋治監修『中国見聞録集成 第一巻』1997年
小島晋治監修『中国見聞録集成 第十一巻』1997年
日本経営史研究所編『五代友厚伝記資料 第四巻』 1974年
宮本又次『五代友厚伝』1980年
Alexander Mckay, “Scottish Samurai: Thomas Blake Glover”, 1993

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