五代友厚 欧州へ(2)
Godai Tomoatsu, To Europe (2)

五代友厚らが辿った日本からイギリスまでの航路
五代らの辿った航路 The sea route from Japan to Britain

まだスエズ運河が完成していなかった時代、スエズからは陸路でアレクサンドリアを目指した。窓外にピラミッドや駱駝の群れを見ながらおよそ12時間の汽車の旅を終え、アレクサンドリアからデルヒ(Delhi)という処女航海を前年に果たしたばかりの客船に乗り込み、マルタ島、スペインのジブラルタルを経て、ついに慶応元年5月28日(新暦1865年6月21日)明け方の午前4時にイギリスのサウサンプトンに到着した。2ヶ月以上の船旅の後、無事目的の地に降り立つときの彼らの安堵と心の震えはいかばかりであったろう。

イギリスの南海岸のほぼ中央にあるサウサンプトンは、当時同じ港町のリバプールの繁栄には遠く及ばなかったものの、港埠頭としては理想的な地理的環境にあり、またロンドンにもほど近く、1840年に鉄道が開通してからは入港する船が世界中から後を絶たなかったという。20世紀に入ってからのことだが、タイタニック号もこの港から出航した。

五代らはサウサンプトンのホテルで休憩をとり、夕方5時半にロンドン・アンド・サウス・ウェスタン鉄道(The London and South Western Railway)の運行するロンドン行きの汽車に乗った。ロンドンまで約120キロの距離を2時間半で走ったという。当時の感覚でいえば非常に早い到着と思われたのではないか。ロンドンの終着駅はウォータールー駅(Waterloo Station)である。

トーマス・グラバーの兄が迎えにきており、馬車でロンドンの西にあるケンジントンのホテルに向かった。6月21日といえばちょうど夏至のころであるから、緯度の高いロンドンでは、午後8時過ぎに到着したとはいえまだ空も明るかったであろう。

After two-month voyage, Godai Tomoatsu and the other Satsuma Students arrived in Southampton, England on 21st June 1965. They got on a train for London on the same day. At the station, Thomas Glover’s brother was waiting for them to arrive.

<参考文献>
宮本又次 『五代友厚伝』 1980年
犬塚孝明 『薩摩藩英国留学生』 1974年
Andrew Cobbing, “The Satsuma Students in Britain: Japan’s Early Search for the ‘Essence of the West’”, 2000
Miles Taylor, “Southampton: Gateway to the British Empire”, 2007

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