
慶応元年6月19日(新暦1865年8月10日)、五代友厚と新納久脩(にいろひさのぶ)、堀孝之、ライル・ホーム(Ryle Holme)の4人はイギリス国内を巡る視察旅行に出発した。1865年8月28日付ロンドン&チャイナ・テレグラフ紙(The London & China Telegraph, 28 August 1865)によると、一行は製造業が盛んなマンチェスター(Manchester)、バーミンガム(Birmingham)、マクルズフィールド(MacClesfield)などを視察し、今はアバディーン(Aberdeen)を初めとするスコットランドの名所を訪れていると伝えている。
薩摩藩留学生の中で最年少だった磯永彦輔が、ロンドンを出発してアバディーンに向かったのが慶応元年6月28日(新暦1865年8月19日)だった。磯永は当時まだ13歳で他の留学生とともに大学に入るには幼すぎたため、長崎で貿易業を営んでいたトーマス・グラバー(Thomas Glover)の実家に世話になりながらアバディーンのギムナジウム(Gymnasium)に通うことになった。
アバディーンはスコットランドでもかなり北の方だから、当時の列車では途中どこかに宿泊する必要があっただろう。磯永の年齢とイギリスに来てまだ2ヶ月という時期から推し量るに、彼がアバディーンまでたったひとりで旅をしたとは考えにくい。五代らは6月28日(新暦8月19日)にマンチェスターにほど近いマクルズフィールドを訪れていることが新聞により伝えられているので、マンチェスターあたりで落ち合ってスコットランドまで行動を共にしたとは考えられまいか。もしくは、イギリスに上陸した留学生たちを初めてロンドンで出迎えたトーマス・グラバーの兄ジム・グラバー(Jim Glover)あたりが付き添ったのか。
Godai Tomoatsu, Niiro Hisanobu, Hori Takayuki and Ryle Holm left London on 10th August 1865, to inspect the major industrial cities in Britain. They probably travelled up to Aberdeen with Isonaga Hikosuke, who entered the Gymnasium in Aberdeen.
<参考文献>
犬塚孝明 『薩摩藩英国留学生』1974年
大久保利謙監修『新修森有禮全集第4巻』「畠山義成洋行日記抄」「英國新聞記事集」1994年
The London & China Telegraph, 28 August 1865